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【第4回】「D」が難しいのはどうして?仕組みの必要性

2017年7月

 ほとんどの中学校、高校は期末テストが終わった頃でしょうか。皆さん、期末テストの結果はいかがでしたか。事前に「目標」は設定できていましたか。目標を達成するための計画は立てられていましたか。計画通りに学習を進めることができましたか。
 計画通りに進められた人はテスト結果を見ながら、うまくいった部分、うまくいかなかった部分をしっかり確認しておきましょう。
 計画通りに進められなかった人もいるかもしれません。計画は入念に立てたつもりなのに挫折してしまったという人はいったいなぜそうなってしまったのでしょう。計画のどこに問題があったのでしょう。今月は「D」を妨げるものについて説明していきます。

①「P」のスケジュールの問題点

入念に立てた学習計画。ここで見落としがちなのが確保した学習時間と自分の集中力の持続時間です。「テスト期間中は部活動が休みだから1日に5時間勉強しよう」と張り切って学校から帰り、まず16:00~19:00で3時間学習。でも本当に3時間集中して取り組めているのでしょうか。「3時間机に向かった」という時間になっていませんか。人間の集中力は実はそれほど持続時間が長くありません。よく言われている集中の持続時間は平均して45分~50分くらいです。それを過ぎるとだんだん集中できなくなり、学習効率が落ちてきます。3時間学習するのであれば、その3時間を1時間ごとに(できれば50分)区切って、間に5~10分の休憩をとるなど、休憩も計画に入れておかなければいけません。


②仕組みづくり 《環境編》

さて、①の例で長時間の学習時間確保を計画していた人は3時間の学習の後、夕食後に2時間。もちろん平日だと学校の授業も受けた後ですから、この頃には学校の疲れも出始めているはずです。そういう時(もちろん夕方の時点でも)、人は様々な誘惑にひっかかってしまいがちです。学習を妨げる誘惑とは何でしょう。
 携帯電話、音楽プレーヤー、本や雑誌、玩具やアクセサリー、テレビ、パソコンやタブレット、ゲーム機器…こういったものが身近にあるとついつい手が伸びてしまいがちです。ちょっとのつもりでスマートフォンを手に取ってみたら友達からメッセージがきていて、返事をしていたらいつの間にか思わぬほどに時間が過ぎていて…他の誘惑の場合でも同じようなことは起こります。
誘惑を回避する方法は大きく2つあります。そのうちの1つは、誘惑になりがちなものを学習環境から排除するということです。学習時間は携帯電話やパソコン、タブレットなどは保護者に預けたり、家では甘えが出てしまうという人は塾の自習室を利用してみたり、自分を誘惑からシャットアウトする方法を考えてみましょう。

③仕組みづくり 《宣言・記録編》

心理学の世界では、物事の習慣を身につけたいときには「まず21日間続ける」ということが推奨されています。21日間続けると、定着して習慣化しやすいそうなのです。ところがこの21日間というのがなかなか続きません。ではどうしたら21日間続けることができるのでしょう。
 まず、「今日から毎日学習時間を2時間ずつとっていきます」という宣言を親しい人にしてみましょう。「この人の前ではかっこ悪いところを見せたくない」という人に宣言しておけば挫折しそうになった瞬間にその人のことを思いだして踏みとどまれるかもしれません。
 次に、「継続日数」を記録してみましょう。「2時間学習18日目」といったようにノートに記録していきます。中学生は学校に提出する連絡ノートに書いておくのもいいかもしれません。継続日数を書いておけば、挫折しそうになった時に「これがリセットされてしまうのか…それはもったいないなあ」と踏みとどまるきっかけにもなります。さらにはこれを「習慣作り」を宣言しておいた人に定期的に見せるようにしておけば、継続する楽しみも出てきます。21日を達成したらそこからまた21日間というように短い期間で中間目標を設定してみることで挫折を防ぎやすくなります。

6月25日(日)
目標:第2回学習の診断 30位以内
今日の目標:歴史の平安時代までを完璧に・計算満点
 
2時間学習継続 15日目
英語教科書音読 43日目
歴史特訓    10日目
 
 
6月26日(月)
目標:第2回学習の診断 30位以内
今日の目標:最初から平安までのチェックテスト8割以上

 

④呼吸で挫折を回避

「意志力」という言葉を聞いたことはありますか。「気力」といった精神論に使われる言葉の方がイメージしやすいかもしれません。注意力や感情、欲望をコントロールする力のことです。物事に取り組む時、何かを持続する時、何かを決定する時、人は心のエネルギーを消費します。この心のエネルギーの総量が「意志力」なのです。「意志力」の総量が減っている時ほど、人はいつもと違う選択をして失敗してしまったり、やろうと決めていたことをやらずに挫折してしまったりするのです。簡単に言えば疲れてしまっている時ほど人は挫折しやすくなるということなのです。続けようと思っていたトレーニングや、ダイエットを、疲れを感じている時に「1日くらいいいかな」という誘惑に負けて挫折するということはそう珍しいことでもありません。
 ではどうしたら挫折を防ぐことができるのでしょうか。実は人間の「意志力」を一瞬だけ回復させる方法があります。それは呼吸を遅くするというものです。「勉強よりも楽しいことをしたい」という誘惑に駆られた時に呼吸をゆっくりにしてみましょう。具体的には1分間に4~5回、つまり1回の呼吸に12秒~15秒をかけるのです。こうすることにより、「意志力」の保有量は増え、誘惑に対して強くなります。更なる「意志力」の高め方は他にもあるのですが、それはまた次の機会に。
※ここで書く方法は100%挫折を防げるというものではなく、あくまで挫折を回避しやすくするための方法です。

 自分の「D」が妨げられる原因は何でしょう。集中力、環境、疲れによる意志力の低下、どれでしょう。また、どんなときに挫折が起こりやすいのでしょう。そこをきちんと確認したうえで、挫折を回避し、継続していくための仕組みをつくりましょう。
 夏休みが目の前に迫ってきています。夏休み中の学習計画は立てていますか。提出日を確認して逆算し、宿題を進めるための計画を、受験生の皆さんは受験で勝利するための力をつける計画をしっかり立て、そのうえで継続の仕組みを使って力をつけていきましょう。
次回は立てた計画を実行してきた評価をしていく「C」の作業について説明していきます。


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